(国立病院へ入院)
最近、額のほくろが少しづつ大きくなっていくのが心配になり、大分医大で1泊2日の手術を受けた。入院はお産の時以来である。家族に余計な心配をかけたくないので、一人で行った。手術は夕方からだが、午前中に病室に入る。手術に必要な検査は事前に済ませており、早速、点滴が始まる。熱や血圧、血糖値を測る。数値はまったく問題ないが、点滴セットを押して歩けば、すっかり病人気分だ。
病室の南側には、濃い緑を纏った霊山と青く夏空。「やった」と思った。空調完備の部屋で、一日中、霊山を眺めていられる幸せなどめったにあるものではない。
病室で7時間待って、テレビドラマに出てくるような手術室で約1時間、部分麻酔なので医者の会話や手の動きが良くわかる。なんだか手間取っているようであった。神の手をもつ医者などそういるものではないのか。
夜になると、白い月が霊山の上を渡っていく。裾野に広がる団地の灯が淡く滲む。「とても素敵よ」と、寒田団地に住む友達にメールで知らせよう思ったが、あわてて見舞いに来られてもと思いやめた。
夜勤の看護師が「手術の跡が痛くなったらすぐに呼んでね」という。夜中に点滴も外してくれた。彼女たちは一晩中、患者を見守り、するべきことをきちんとする。
私はいつもの癖で、私にかかる医者や看護師の人件費、設備の減価償却費、病室の維持費などあれこれ試算して見る。
朝食には焼きたてのパン、サラダ、メロンなどが出た。パンは大きすぎたのでビニール袋に入れて持って帰った。
朝の回診のあと、結果と治療方針を聞いて、退院。手術、入院費用は、事前に病院から「限度額適用認定」を進められて市役所で手続きしたので、患者負担額の1/3程度の金額、思ったよりかからなかった。
私は、この国に税金を長いこと払ってきて良かったと思った。国民健康保険税が高いのも合点が行った。そのことを東北医大に勤める娘に話すと、「私立の大学病院のサービス競争はもっとすごいよ。それに退院の時に医療費を払えない人も多いので、取りはぐれないように、事前の手続きをしてもらうのよ」とのこと。
そう、病院の快適なサービスも、私たちの「銭」の上に立っているのだ。