九六位山日記(ゆきのさきこ)

私のマンションのベランダから見える山は、九六位(くろくい)山です。雨はいつもこの山を越えてきます。

おとなになってもおもちゃ

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ロッコ 砂漠の街に猫

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おとなになってもおもちゃ

 ある本によると「産まれたばかりの赤ちゃんは、この世に一人投げ出されて不安なので必死に泣き叫ぶ。そこでお母さんがおっぱいをくれ、抱き上げてあやしてくれるので、安心する。少し大きくなるとおもちゃで機嫌を取ってもらう。そしてこのおもちゃやご褒美をもらう癖は大人になってもずっと続き、さらに新しい高度なおもちゃを欲しがるようになるのだそうだ。

 それで納得がいった。男性の代表的な悪癖「飲む、打つ、買う」もこの続きなのだ。ご主人の悪癖に泣かされた奥さんも多いと思うが、ただおもちゃが欲しかったのだとわかれば少しは許せるではないか。

 女性の「子育て、家事」もおもちゃの類だろう。だから多くの主婦は夫に家事を譲らないし、子供も独り占めしようとする。子供が独り立ちした後に陥る「空の巣症候群」はおもちゃを取り上げられてショックを受けた状態だろう。私の場合もしばらくぼんやりした日が続いた。夕方のスーパーマーケットでカートいっぱいに食料を買う癖がなかなか抜けなかった。

 登山仲間の70代の良いお宅の奥様たちが、なぜ苦しい思いをして山に登るのか、そこに彼女らの何があるのかとずっと関心を持って眺めていたが、子育てや家事の代わりになる、高度なおもちゃを手に入れたと思えば納得がいく。

 最近、彼女たちの亭主愛が復活している。つい最近まで「もう別れたい」「家に居るだけで腹が立つ」と嫌っていたのに、「主人の夕飯を用意して来た」とか「今日は主人の具合が悪いのでそばにいる」などと言い出した。老老介護に向かってさぞ楽しみなことだろう。別に羨ましくはないが。

 そういう私もスケジュール帳は登山、テニス、フルート、各種教室、合間に飲み会で埋まっている。手軽なおもちゃばかりで、世のため人のためになるものは一つもない。若い頃から結構本気で生きてきたと自負しているが、70年の結果は何とも軽い。もちろん良いおもちゃを手に入れて、世の中を変える大発明をしたり、素晴らしい芸術作品を残した人もたくさんいる。