九六位山日記(ゆきのさきこ)

私のマンションのベランダから見える山は、九六位(くろくい)山です。雨はいつもこの山を越えてきます。

私のシュウカツ

七十の坂をどう登って行くか(私の終活)  

 (2018.4)

 私は、今年七十歳になる。登山でいえば七、八合目である。最後の急登にさしかかり、下界を見下ろすようになる。軽い達成感が心地よく、水分を補給しリュックを担ぎ直して頂上に向かう。

 では私は、自分の七十の坂をどう登って行くか。家の中は断捨離をして不用なものはほとんどない。高齢者向けのCM「死んだ時のための保険」に向かって「子孫に美田を残さず」と返す。

 残る問題は私自身だ。執着が強くいつも不満を抱えている。周りの人や世の中に意見してしまう癖は職業病だ。家族が我慢することも多いはず。私に恨みを持っている人もいると思う。早くこの性格を治さなければ、私はみんなに嫌われたまま年を取っていくことになる。

 老人施設で働いている友人の話。「入居者同士でつかみ合いの喧嘩をする。職員を激しく怒ったり叩いたりする。自分もそうなりそうで心配」。なるかもと思った。若い頃から苦労の多い人だから。

 長い人生で心の中に怒りや恐れが積もりに積もって、その毒が体に回り、自分を制御できなくなるのではないかと思う。窓口で怒る老人も話題になっている。集まれば誰彼の悪口を行ってしまうおばさん達。心に悪性のガンができているのかも知れない。

 私の心の中の毒をきれいに消してしまいたい。できることなら「赤ん坊のように無垢に」「菩薩のように優しく」なりたい。そうすれば良い八十代、九十代が待っている気がする。今からその方法を探さねば。二人の孫がものごころつくまでに変化せねば。これが私の終活である。

 それでも毒が残ってしまったら、申し訳ないが老人ホームで私も暴れる。