九六位山日記(ゆきのさきこ)

私のマンションのベランダから見える山は、九六位(くろくい)山です。雨はいつもこの山を越えてきます。

貧しいおばあさんは清々しい

貧しいおばあさん 最近、4歳と2歳の孫に受けているのが「むかし、むかし、明野団地に二人の子供がいました」で始まる、兄のレイチ君と妹のふーみんが登場する、我が家オリジナルの昔話である。これに近所に住む貧しいおばあさんが1人加わる。このおばあさん…

ニューヨーク7日間

ニューヨーク9・11メモリアルパーク、ワールドトレードセンタービルの跡地に、ノースプールとサウスプールという2つの滝の形をした記念碑がある。黒い正方形のプールの四方の壁から、水が細かく激しく溢れ出し、真ん中にある小さな正方形の穴に向かって…

大分百山完登

大分県は森林が約71%を占める”山の国”である。大分自動車道を福岡方面から日田に入ると左右に連なる山々、釈迦岳など津江日田山群だ。さらに走ると車窓に湧蓋山、由布山、時にはくじゅう連山や祖母・傾山などが遠望できる。 JR日豊本線で県内を南下すれば…

「騎士団長殺し」読む

五月の連休に、村上春樹の「騎士団長殺し」を読んだ。発売は昨年の二月だが、新刊発売の騒ぎが治まるのを待っていた。 今回の主人公は三十代半ばの画家である。何かの理由で妻に去られ、自信をなくし絵も描かずにいる。留守番がわりにと貸してもらった友人の…

みどりが足りない

緑は足りているか。 モノレールから見下ろす東京は、思いの外、緑が多く目が癒される。でもこの高層ビル群で働く人たちをそこに置いて見ると、この緑ではとても足りない。人がはみ出してしまう。そんなことを考えている私は、登山仲間十四人と恒例の夏山遠征…

働く=いのちき

働く=いのちき(2016.9) 昭和38年、中学校の同級生の何人かは集団就職で名古屋に行った。臼杵駅で先生と一緒に見送った。私は羨ましくも寂しくもなかった。その頃の農村はまだ貧しく自分で自分の道を選べる子供はほとんどいなかったと思う。臼杵川の土手…

老年時代を行く

老年時代を行く (2016.8) エアロビクスのレッスンの後で、床に座って余韻に浸っていたら、若い人が「気分でも悪いのですか」と覗き込む。テニスの帰りにラケットを持ってコンビニに寄ったら、店員が「エーッ、まだコートで走れるんですか」と声をあげる。…

冬の贈り物

冬の贈り物 (2018.3) セーターはカシミヤに限る。冬になると引き出しから何枚か出しておく。首に柔らかく、暖かいし、軽くて肩も凝らない。 二十代の頃、いつも良いものを着ている友人がいた。彼女がいるだけでまわりまでおしゃれに見えた。彼女は、子供の…

私のシュウカツ

七十の坂をどう登って行くか(私の終活) (2018.4) 私は、今年七十歳になる。登山でいえば七、八合目である。最後の急登にさしかかり、下界を見下ろすようになる。軽い達成感が心地よく、水分を補給しリュックを担ぎ直して頂上に向かう。 では私は、自分の…

さきちゃんの家出

私のひたいの真ん中に大きなホクロがある。いつか街で占いの人から「お釈迦様と同じところにホクロがありますね」と呼び止められたことがある。「お釈迦様は、家族を捨て国を捨て、放浪の生涯を送った人。男性ならそれで良いが、あなたは女性、大地に根を張…

残念なおじさん

残念なおじさん 男女雇用均等法ができてから30年が経つ。この法律は男女の生き方を少しずつ変えてきた。どの職場でも前面に立って働く女性を見かけるようになった。さらに育児・介護休業法で”イクメン”も増え、家庭の様子も変わってきた。結婚した私の息子…

さきちゃんの手

さきちゃんの手 久しぶりに私を「さきちゃん」と呼んでくれる人ができた。二歳の孫である。母方のおばちゃんもいるので、私は名前で呼んでもらうことにした。 私が身内だとわかるのだろうか「さきちゃん」「さきちゃん」と手を出して来る。顔は家族の誰彼に…

ヒマラヤ・ゴーキョピークに登る

ヒマラヤ・ゴーキョピークに登る 「エベレスト街道を歩きたい。」そう願うようになったのは、作家井上靖氏の「わが一期一会、ヒマラヤ山地にて」を読んでからである。昭和四十六年に氏がヒマラヤ・トレッキングに参加した際の少年シェルパ・ビンジョとの交流…

カフェで朝食

ゴミ出しの朝は、せっかく服を着替えたのだからと近所のカフェに行く。 若いご夫婦が2年前に開店し、朝7時半から、焼きたてパンの朝食を出す。私のお気に入りは、チーズオムレツとマッシュポテト、ロールパン2個そしてコーヒーのセット、500円。コーヒ…

電車の中で本をもらった

「良かったら、この本をもらってください」と、電車の中で、隣の席の男性が 紀伊国屋のカバーのかかった文庫本をくれた。 私は、夕方からの仕事で大分駅から亀川まで行く途中で、持参した本を読んでいた。宗教の勧誘かしらと思ったが、断る理由がとっさに出…

おひとり様

おひとり様 我が主婦友のほとんどは六十代後半である。最近ランチの時など、「主人がいなくなったら寂しい。どうしよう」と相談される。何を言ってるの。ついこの間まで、「主人抜きで旅行がしたい」「帰りを気にしないで遊びたい。あなたが羨ましい」などと…

不機嫌の原因

(不機嫌の原因) 金曜日の夕方、駅前のバス停に立っている私の機嫌はとても悪かった。たった今、産院で、産まれたばかりの女の子の孫に会ってきたばかりなのに。 この不機嫌、不安の元はどこから来るのか。周りを見回すと、女子高校生が数人、下を向いてス…

国立病院へ入院

(国立病院へ入院) 最近、額のほくろが少しづつ大きくなっていくのが心配になり、大分医大で1泊2日の手術を受けた。入院はお産の時以来である。家族に余計な心配をかけたくないので、一人で行った。手術は夕方からだが、午前中に病室に入る。手術に必要な…

ミヤマキリシマは今年も

久住連山のミヤマキリシマを、昨年は「もう一生分見たよ」と思っていたが「今年の花はもっと良いよ」と知らされ、雨模様を気にしながら、山友達二人と長者原、三俣山、法華院温泉のルートを出かけた。 ピンク色のミヤマキリシマは久住の山々一帯に広がり、め…

英国で由緒正しいハイキングをした

成田空港の両替所で「イギリスはボンドかい、ポンドかい」と大騒ぎし、私達山女4人は「美しき英国ハイキング13日間」ツアーに出発した。 ラグビー、サッカー、ゴルフなど英国が発祥のスポーツは多い。登山、ハイキングもまた英国の貴族社会から生まれたも…

モロッコ追想

(サハラ砂漠) モロッコツアーは6日目。ツブカル山に登った後、サハラ砂漠に向かった。ツアーガイドはベルベル人のハミド、もう一人、小型バスの運転手。二人とも観光客から習ったという日本語を少し話す。ハミドは、これから二日間かけて向かうメルズーカ…

キリマンジャロの登山ポーター

キリマンジャロの登山ポーター 今から6年前、山仲間6人で結成したキリマンジャロ登山隊は、ケニアからジープでタンザニアに入国。ベースホテルで登山の準備。現地で雇ったガイドとポーターは全部で12人。彼等は6日間、テント、水、食料等を担いで私達6…